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2016年12月 5日 (月)

シンポジウム「地域医療構想を考える」 日本医療経済学会第40回研究大会を終えて(2)

シンポジウム「地域医療構想を考える」

  最後の企画は、今都道府県で議論されている地域医療構想をめぐるシンポジウムでした。シンポジストは、研究者お二人と労働組合の方です。以下の記載は私の方での簡略化したまとめであり、報告者の正確なご主張については後日何らかの形で公表される(と思いますが)論文をご参照ください。
まず、『地域包括ケアと地域医療構想』の著書等により地域医療構想に対する見解をこれまでも報告されていた二木立(日本福祉大学)さんは、地域医療構想は地域包括ケアシステムと一体的に検討する必要があることを述べた上で、地域医療構想を推進しても必要病床数の大幅削減は困難であるという見通しを主張されました。ただし、都道府県に設置されている地域医療構想調整会議においては、病床数をめぐる「攻防」があり、都道府県行政と医師会との力関係、また各都道府県における公私立病院の役割などによって、それらの結果は変わってくるという見通しを示されました。

 次に、芝田英昭(立教大学)さんは、地域医療構想は医療提供体制だけではなく、「医療費削減」という目的が窺えるが、在宅医療費は決して安上がりでないことを考えると、むしろ医療や介護における公費の増額を図るべきだと主張されました。また、健康・医療戦略推進法など健康・医療において市場化をすすめる動きに注目して、それについて「人間の生命・生活の根幹をなす分野を市場かすることは、商品としての同分野を購入できる者とできない者との格差を拡大させ、健康破壊を推し進める」(この部分は、同氏の論文(1)の22ページからの引用です)ものとして批判されました。

 最後に、新家忠文(みえ労連副議長)さんは、三重県における地域医療構想の検討経過における特徴を報告されました。三重県では4つの二次医療圏を8構想区域に分けて検討が進められていますが、医療需要・必要病床数の推計をめぐり、地域や医療現場での実態からの異論が多くだされ、そこでの「攻防」があったこと、さらに構想検討会だけでなく、3県の病院協会長の発言を紹介する新聞意見広告、県議会での「地域の実情に応じた医療供給体制の確保を求める意見書」の採択など幅広い社会的議論が行われ、労働組合としても関係者との懇談を行うとともに、節目のシンポジウムの開催、独自の病床推計の作成、在宅医療アンケートなどに取り組んできたこと、このような経過の中で需要推計が変遷してきたこと、を報告されました。

  以下は私の感想(というかこの主題に関わって考えていること)ですが、「地域医療構想」はこの間進められてきている都道府県単位を軸とした医療保険者の再編と合わせて、医療政策における都道府県の役割を重要にしているものです。普遍主義的で効率的で質のよい医療を実施していく上では、政策の基軸となる枠組みの設定に加えて、低所得者などのアクセス困難になりやすい人々への配慮が必要ですが、そしてそうしたことに関わる情報を集約し、知恵を出していく良好な議論の場がうまく形成されるかどうかが、かなり重要なように思われます(これは、実証研究の課題でもありますね)。

(1)芝田英昭「地域医療構想と国民医療費削減への飽くなき野望と医療・介護分野の産業化」『大阪保険医雑誌』2016年8・9月合併号, pp.18-23.

2016年12月 4日 (日)

日本医療経済学会第40回研究大会を終えて

 昨日、京都橘大学で開催された日本医療経済学会第40回研究大会が終わりました(学会のサイトは、こちらへ)。参加人数は30-40名ということで小規模なものですが、報告された内容はいずれも興味深く、学会長を務めているものとしては、喜ばしい限りです。

国保財政の機能別財源分析

 まず、一般演題は、大野博(埼玉県さいたま市国民健康保険運営協議会委員)
さんの 「都道府県が国保の財政運営の責任主体となることに伴う問題点と課題」という報告。この報告では、市町村が運営している国民健康保険(国保)の財政総括表(国民健康保険事業状況報告書の集計表)を用いて、医療分、介護分、後期高齢者医療制度支援分に分けた財務状況を検討して、現状と課題をみようというもの。各保険者の収入は、保険料に加えて、国庫支出金、都道府県支出兼、さらに共同事業交付金、法定外繰入金など、いろいろあり、また支出の方も保険給付費だけでなく、支援金、前期高齢者納付金、介護納付金など非常に複雑になっていいます。
 報告で用いられた方法などは今後検証が必要かと考えますが、後期高齢者医療制度、介護保険制度、前期高齢者における財政調整などがある中で、「国保の赤字」というのは単純に保険料と給付費の差から生じているいうイメージで議論すると間違う可能性があるという点が、さしあたっての私の理解です。

研究交流

 その後、研究交流ということで、発行された3つの本についての紹介と議論がありました。ここでは議論は省略し、リンクをはっておきます。

佐藤英仁 『医師・看護師不足の現状と労働環境』(ブイツーソリューション、2015)

長友薫輝『市町村から国保は消えない─都道府県単位化とは何か』(神田敏史氏との共著、自治体研究社、2015)

松田亮三『社会保障の公私ミックス再論:多様化する私的領域の役割と可能性』(鎮目真人氏らとの共編著、ミネルヴァ書房、2016)

TPP協定と医療制度

午後の最初は、髙山一夫(京都橘大学)さんによる教育講演「TPP協定と医療制度」でした。今次TPPは、米国の政情により成立の見込みが非常に危ぶまれています。報告では、WTO体制の中でのTPPの性質とそれが医療に与えうる影響を簡潔にご報告され、今後の研究課題について展望されました。

シンポジウム「地域医療構想を考える」

 最後の企画は、今都道府県で議論されている地域医療構想をめぐるシンポジウムでした。これは、かなり白熱した議論も行われましたが、次の記事にしたいと思います。

 

2016年11月 8日 (火)

2017年度のゼミのテーマ

 いま私の所属している学部では、来年度の3回生ゼミのマッチングが行われています。このマッチングは、教員がゼミのテーマを示して行われるのですが、私は「医療・福祉制度の比較分析―国家・市場・社会の役割に注目して」というテーマにしました。

 副題が抽象的ですが、この春に同僚と出版した『社会保障の公私ミックス再論』のテーマでもあった、医療・福祉の課題にいろいろな主体がどのように関わるか、を考えていこうというテーマです。

 といっても、あまり抽象的に考えてもなかなか理解が深まりませんので、例えば、以下のような具体的な医療・福祉の課題を学生のみなさんに示して、一緒に考える課題を絞っていきたいと思っています。

  • エンド・オブ・ライフ・ケア(人生の終わりのケア)を支える制度を構築するには、何が必要か?
  • 子育て支援のために、子どもの医療費は無料化すべきか?
  • 認知症のケアを地域るために、どのような次の方策がありうるか?
  • 家族生活と職業生活の両立はいかになしうるか?介護休暇や育児休暇を通して考える。

 ゼミでは、歴史、地域の特徴、国際比較などを通じて、こうしたことを考えてみたいと思っています。

 

2016年11月 7日 (月)

第3回国際公共政策研究大会(シンガポール) 演題募集中

こちらは国際学会ですが、ただいま演題募集中です。第1回大会は2013年にグルノーブルで、第2回大会は2015年にミラノで開催されてきました。ミラノの大会で、常設組織を設けることが定まり、International Public Policy Association (素直に訳すと「国際公共政策学会」となりますが、これは既存団体と名称が同じになりますので、やや難があるかもしれません)が発足しております。
 第3回は、アジアで初めての開催です。来年の6月末の開催で、これは日本の研究者にとっても割と参加しやすい時期のように思います(7月は試験などいろいろありますので)。分科会の申し込みは終わりましたが、個別演題の申し込みは2017年1月15日まで受け付け中です。
この学会はIPSA(International Political Science Association)と実際的な関係をもちちつ活動をすすめてきており、私の関係する医療政策の領域でも、IPSAの領域研究委員会(RC25)がその創設時から協力をすすめてきています。
今回、注目されるのは、このRC25の組織により、比較医療政策の方法等を議論するパネルが設けられることです(ポズナンでIPSA大会で持たれた会合での議論を受けたものです)。詳しくは、大会ウエブの以下のリンクをご覧下さい。
Conference in a Conference: Comparative Health Policy & Health Politics
大会での分科会は、アジェンダ設定など公共政策学の主題によっておおむね区分されていますが、健康・医療、環境、インクルージョンなど政策課題ごとの分科会もあります。健康・医療の分科会は、先のものに加え、普遍主義給付、たばこ政策、行動経済学あるいは行動科学の政策への活用、介護財政、などのテーマがあげられています。公共政策の主題に関する分科会の数も膨大ですので、政策過程や理論的主題に関心のある方も応募できる枠となっています。私も現在演題応募について検討しているところです。なお、この研究大会では、まず応募する分科会を決めてから応募する必要があります。
なお、研究大会のウエブは、以下のurlにあります。
http://www.icpublicpolicy.org/Singapore-2017

企画案内:日本医療経済学会第40回総会・研究大会(京都)

私が現在会長を務めています学会の研究大会が来月開催されます。一般の方も参加可能ですので、是非ご参加ください。

学会サイトからの転載です。

http://www.s-off.com/member/jspehhc/

日本医療経済学会第40回総会・研究大会

日時2015123() 900開場1700

(日付を間違えておりました。申し訳ありません。上記が正しいものです)。

会場:京都橘大学明優館D202教室

午前9301130

自由演題(会員の自著紹介等も検討)

総会11301200

午後13001645

教育講演「TPP協定と医療制度」

シンポジウム「地域医療構想を考える」

 

13001400教育講演「TPP協定と医療制度」

 

  髙山一夫(京都橘大学教授)

(教育講演企画主旨)

 国内外のTPP協定に関する動向に注目が集まっています。TPP協定と医療制度について考える教育講演を設定しました。

141016:45シンポジウム「地域医療構想を考える」

シンポジスト

  二木立(日本福祉大学学長)

  芝田英昭(立教大学教授)

  新家忠文(みえ労連副議長)

コーディネーター・司会

  長友薫輝(三重短期大学教授)

(シンポジウム企画主旨)

 「地域医療構想」はデータに基づき、各地であるべき医療を議論し形成する契機としてとらえることができます。ところが、各都道府県における「地域医療構想」の策定状況をふまえれば、実際には病床数の決定が先行するなど、医療の将来構想を地域で議論し、合意形成を図っていく状況にはまだ至っていないように見受けられます。

「地域医療構想」策定に向けた地域の動向などをもとに、これからの医療を地域でどのようにつくっていくのか、みなさんとともに議論を進め理解を深めたいと思います。

 参加費:会員3,000円、非会員4,000円、大学院生・学生1,000

2016年10月26日 (水)

「在宅入院」という概念

前の記事で紹介した企画は無事終了いたしました。日韓医療保険が保険料賦課に関わり共通の問題を抱えていること、けれども異なる制度の下で、異なる出現の仕方をしていること、を示したものとなりました。大変熱のこもった議論も行われ、いずれ活字になるよう考えております。

さて、今回は「在宅入院」という言葉について、ちょっと書いておきます。私がこの言葉に最初に出会ったのは、フランスの医療施設について調べているときでして、 hospitalisation à domicile という用語が用いられ、HADと略されます。「居宅での入院」という表現には戸惑いますが、病院で行われるのと同じ程度に集中的な医療サービスが、居宅において実施されること、という意味合いです。ただ、「入院」ですので、「退院」がある分けで、一定の期間を区切って実施するという運用です(もちろん、必要に応じて「入院」が継続されることもありえます)。このような実態から意訳すれば、「高濃度居宅医療サービス」とでもいうことになるでしょうか。同様の概念は、英国、オーストラリア、そして米国でも用いられています(1)

日本でも同様の「濃い」医療サービスが行われている場合があると思いますが、同様の概念はなく、例えば「医療ニーズの高い方の在宅ケア」の課題として議論されているかと思います。

この「在宅入院」あるいは「高濃度居宅医療サービス」は、日本の医療機構を考える上でも重要なアイデアだと思いますので、何回かに分けて書いていきたいと考えています。

(1) Terrade, O., Tsutui, T., and Cottencin, A. 2012 Hospital care at home in France: an alternative to conventional hospitalization with the same obligations towards quality and administration, Journal of the National Institute of Public Health, 61 (2): 148-154.



2016年10月16日 (日)

日韓医療保険における保険料賦課の検討―政策デザイン論的視点から

本日の午後、コーディネートした企画が、同志社大学今出川キャンパスで開催されます。

社会
政策学会第133回大会・テーマ別分科会
保健医療福祉部会、日本・東アジア社会政策部会共催
学会サイト

日韓医療保険における保険料賦課の検討―政策デザイン論的視点から
(継承略)
コーディネーター:松田亮三(立命館大学・教授)

座長:土田武史(早稲田大学・名誉教授)

報告1「韓国における健康保険料の賦課体系の改革を展望する」
    鄭在哲(国民の党・国会福祉担当専門委員

報告2「日本の医療保険における保険料賦課の構造と課題」
    三原 岳(東京財団・研究政策プロデューサー)

予定討論者1 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所・国際関係部第2室長)
予定討論者2 松田亮三(立命館大学・教授)

2016年10月15日 (土)

ブログ再開。そして、タイトル変更しました

ブログ再開します。そして、タイトル変更をしました。
この1年、主に欧州におりましたので、更新を怠っておりましたが、日本での生活にもそこそこ慣れてきましたので、ブログを再開します。
そして、企画の告知だけでなく、いろいろ思いついたことや考えたこと、そして新しい文献のことなどを発信するブログにしていきたいと思っております。
ご覧いただければ幸いです。


2014年12月22日 (月)

年末研究会情報: 研究ワークショップ「健康と平等の規範理論」

日本でRationingを議論する機会というのはそうそうなく、かなり貴重な機会になりそう。

http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/608

以下、生存学研究センターのウエブの広報から一部転載。

日時:2014年12月26日(金)13:30-18:00

会場:立命館大学衣笠キャンパス 創思館401・402
主催:立命館大学生存学研究センター
共催:立命館大学人間科学研究所 インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究プロジェクト・方法論チーム(代表者:松田亮三)
参加:参加費無料・申し込み不要

※駐車場・駐輪場がありませんので、公共交通機関をご利用になりご来場願います。

開催趣旨

今回の研究会企画では、分析的規範理論において国際的に活躍しているマギル大学哲学科准教授・広瀬巌先生をお招きし、近著Bognar, Greg and Iwao Hirose, 2014, The Ethics of Health Care Rationing: An Introduction, Routledgeの内容を踏まえて健康と平等の規範理論に関するご講演をいただき、それに対する理論と政策の双方の観点からコメントと質疑を行います。そして、関連する領域で研究している規範×秩序研究会のメンバーにも報告してもらい、フロアーの参加者も交えた全体討論も行います。

2014年12月12日 (金)

立命館大学産業社会学部創設50周年記念学術企画「 社会保険と医療のセイフティネット―日仏米医療制度の比較検討」

日時:2015年1月16日(金) 14:45~17:15
会場:立命館大学衣笠キャンパス・末川記念会館講義室(http://www.ritsumei.jp/accessmap/index_j.html)
司会・コーディネーター(企画責任者):松田亮三(立命館大学産業社会学部)
報告分担とシンポジスト
日本:長谷川千春(立命館大学産業社会学部)
フランス:モニカ・ステフェン(フランス国立科学研究センター)
米国: 高山一夫(京都橘大学)
指定討論者:
深澤敦(産業社会学部)
ジェームズ・ワーナー・ビヨルクマン(ハーグ社会科学研究所)
主催:立命館大学産業社会学部
共催:科学研究費(基盤B)「変動する社会における社会保障公私ミックスの変容」(課題番号:26285140)
入場無料/事前予約不要
お問い合わせ先:立命館大学産業社会学部 創設50周年記念事業委員会事務局(ss50th@gst.ritsumei.ac.jp)
詳しくは、以下のURLのチラシをごらんください。
http://www.ritsumei.ac.jp/ss/ss50th/common/file/academic02.pdf

«国際会議「多様化する社会における健康・医療の政策・政治:アジアとグローバルな課題」